ゲーム業界に入りたいと考える若者に話を聞いてみると
「モンスターハンターが大好きだからカプコンに入りたい *1」
というような理由が多い。
しかしいくらそれを熱心に訴えても
そういう方向では入社は叶わないし、
仮に入れたとしても幸せになれる確率は低い。
価値基準がまったくズレているのだ。
会社はファンクラブではない
会社員というものは支払われている給料に対して
成果を発揮することを期待されている。
自社の商品を愛してくれるのは嬉しい限りだが、
そういう人が社員としても有能かどうかは別だ。
こういう人は「いかに作品を遊びこんだか」を強く語るのだが、
反面、会社に対してどういう能力が提供できるかは
ほとんど考えていなかったりする。
会社は営利団体であってファンクラブではない。
金持ちと結婚したいと願っている人がいたとして、
相手にどれだけ惹かれているかを語っても
それに釣り合う魅力が自分になければ
結婚できるはずがないのと同じだ。
人気ゲームのファンは全国にたくさんいるわけだし、
商品に対する思い入れをいくら語っても
給料を払う価値がある人材だとは判断されないので
アピールする方向がまったくズレている。
その作品の開発はすでに終わっている
仮に作品が大好きだからこそ
改善案を出したり開発に意欲を燃やせるとしよう。
しかしその愛してやまない商品はすでに発売済みであり、
今さらその人を入社させてもその価値は発揮されない。
すでに完了した仕事である以上、
過去に戻って開発に関わることは不可能だ。
今後の仕事で役立つことが求められている社員と
すでに終わった作品への熱意を燃やす人の間には大きな溝がある。
会社がどういう人材を必要としているかを理解すべきだろう。
好きなシリーズの開発に携われるとは限らない
ゲーム会社はいろいろな作品を手掛けており、
仮に好きなゲームの続編を作る予定があったとしても
運よくその開発チームに入れるとは限らない。
どんな作品に関わっても能力を発揮できる方が
社員としては価値が高いわけで、
特定の作品への強い愛情を示せば示すほど
役に立つ場面が限られる人材だと思われてしまう。
新たな面白さを作り出す能力が求められる
ゲームというのはシリーズ作品であっても
常に新しいアイデアや面白さが求められる。
本人は自分の好きな作品に携われれば幸せなのかもしれないが、
会社の方は過去の作品を超えるものを欲しているわけで、
旧作の完成度を評価するばかりでは新たな発展はできない。
また、特定のゲームにのめり込む人の
「もっとこんな風にして欲しい」というアイデアは
単に自分好みに仕上げるための意見でしかなく、
多くのユーザーを満足させる視点が抜けている。
ゲームはあくまで商業作品であり、
いかに話題を読んで利益を生み、
多くの人を満足させて会社の評価を上げられるかが重要だ。
それが意識できない人を採用することはない。
商品の良し悪しと労働環境は別
作品がいかに素晴らしかったとしても、
それを生み出した会社が職場としても優秀とは限らない。
社員として働く以上、勤務地や給料、
残業の量や人間関係が許容範囲かどうかは非常に重要だ。
ゲームの面白さと職場としての居心地の良さが比例するわけではないし、
優秀な作品を生み出すクリエイターが人間的にも優れているとは限らない。
好きな作品に関われるからといって
ブラックな環境で疲弊しながら働くのは間違っているし、
会社や作品の知名度が低くても
働きやすい職場なら幸せになれるだろう。
そのあたりの労働環境を一切考えずに
特定のゲームが好きというだけで就職先を決めるのはナンセンスだ。
まとめ
銀行業界を目指す人が通帳のデザインで就職先を決めるはずがないし、
不動産会社への志望動機と店に掲げている物件情報とは無関係だろう。
それなのにゲーム業界を目指す人だけは
なぜかゲームの好き嫌いで就職先を選ぼうとする。
好きな作品はプライベートで遊べば満足できるわけで、
入社先は会社員として幸せになれそうな会社を選ぶべきだ。
早くこの2つの価値を切り分けて判断できるようになって欲しい。
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