プチメタ3.0

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KDP著者にとってKindle Unlimitedは是か非か



Amazonの読み放題サービス「Kindle Unlimited」が始まって約1週間。
いろいろな意見を読んで考えてみた。

まず、出版社が発売している一般的な書籍が
Kindle版としても発売されている場合と、
著者がKindleによって自費出版している場合(KDP)とは
区別して考えなければならない。

一般書籍のKindle版は読み放題の対象にするかどうかを
各出版社が判断できるらしく、
ビジネス的な判断で読み放題の解禁を遅らせることができる。
(しかも読み放題参入を促進するため、初年度は
 対価の支払い条件がかなり甘いという噂も聞く)

これがKDPになると70%のロイヤリティを選択した段階で
Amazon以外での販売が禁止されるとともに、
読み放題対象に入れられてしまう。
これを避けるには35%のロイヤリティに下げるしかなく、
しかもその選択は3ヶ月おきの区切りでしかできない。

Amazonの書籍ランキングは
読み放題としてダウンロードしたものもカウントされるため、
読み放題対象から外すと売れるチャンスは激減する。
しかも35%のロイヤリティ、となると
対価を期待している著者に選択の余地はない。

読み放題で読まれた場合の対価は
読者が読んだページ数に応じて支払われるため、
書籍の定価はほとんど意味をなさなくなる。
1冊800円の本も200円の本も同じページ単価となるのだ。
(定価を高く設定することで、読み放題のお得感を煽ることはできるかも)

さて、ページ数を基準に対価が支払われるからといって
余白だらけのスカスカの内容にして稼ぐことができないよう、
Amazon独自の計算によって
「実質的なページ数(KENPCと呼ぶ)」が算出される。
先日、私が出版した本
Amazonの商品情報には「紙の本の長さ:41ページ」と記載されているが、
著者の管理ページで確認するとKENPCは61である。

1ページに対していくらもらえるかは
Amazonの決めたその月の基金(今月は12億5千万円)を
世界中のページ数で山分けする方式なので翌月になるまでは不明だ。
本がたくさん読まれた月は単価が安くなるだろう。
Amazonにしてみればどれだけ本が読まれても
著者に支払う合計金額が変わらないので安心だが、
著者にとってはページ単価が安い月に読まれると辛い。

先にKindle Unlimitedサービスが始まっていた海外では
ページ単価は0.5円程度らしいので、
KENPCが61の私の本が完読された場合、約30円の利益となる。
250円の本を普通に買ってくれた場合、
消費税を除いた分の70%が利益なので161円の儲けだ。
つまり、5分の1以下の利益に下がる。

単純に比較すると大損に思えるが、
「読み放題がなかったら買ってもらえていたのか」と考えると、
そんなうまくはいかないだろう。
「読み放題だったからこそ読んでもらえた」と考えるのが自然だ。

1冊の売り上げは5分の1に下がるが、
その分、5倍の人が読んでくれるなら儲けは等しくなる。
読み放題になることで本に手を出す敷居が下がるし、
「この本よかったから読んでみて」と他人に薦めやすくなる。
つまり、これまでよりも広く浅い形で売ることになる。

また、TSUTAYAでレンタルできる映画や
huluなどの定額動画配信サービスで観れる映画でも
Blu-rayを買う人がいるを考えると、
読み放題で読んで気に入った本も、買ってもらえる可能性がある。
「自分の物として手元に残しておきたい」という欲求があるためだ。

そうなると著者にとっての読み放題は、強力な宣伝をしながら
しかも読まれた分の利益が入るというお得な手段とも考えられる。

もっと前向きに考えると、こうやって書いたブログ記事は
いくら読んでもらっても収入にならない無料記事だが、
Kindleの読み放題は読んだ分の対価をもらえる有料記事だと考えられる。

一冊の本として考えると
読み放題サービスは本来の対価がもらえなくて損に思えるが、
宣伝手段やWeb記事として考えると
利益が発生するだけでありがたいともいえる。

このとらえ方の違いによって、KDP著者にとっての
Kindle Unlimitedの賛否が分かれる。

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