アニメやマンガで時間を止めて自分だけが動ける表現があるが、
「物体は固定されているのか」がいつも気になる。
たとえばコップが割れた瞬間に時間を止めれば
破片は空中に留まっているだろうが、
自由に動ける主人公がそれを手で動かそうとしたときに
固定されていて動かせないのかどうかだ。
もし動かせるとした場合、
触れた物体が時間停止の枠から解除されたと考えられるので
触れた瞬間に重力の働きで下に落ちるはずだ。
つまり主人公が触れた端からどんどん時間停止が解除されていく。
しかし、この場合は止まっている人間たちを
勝手に移動させてイタズラする、という内容に矛盾が生じる。
持ち運ぼうとした途端に時間停止が解除されてしまうからだ。
動いていた車にうっかり触れようものなら
いきなり跳ね飛びされてしまう。
(この車は前を走っている静止中の車につっこむ)
「自由に動かせるけれど、手を離すと再び固定される」ということなら
余計にややこしくなる。
たとえば時間停止の中でボールのようなものを投げたとすると
手を離した瞬間に空中で固定されることになるが、
そのあとに時間停止を解除すると
このボールは真下に落下するのか、
投げたときの勢いを受けて飛んでいくのか。
もし自由落下するなら、主人公が触れた物体は
もともと持っていた速度がゼロになると考えられる。
走っていた車に触れると、
車体は時間停止解除とともにその場に居続けるが、
中のドライバーには触れていないため、
車内で激しい衝突事故が起こる。
うっかり地面に手をつこうものなら地球の自転や公転が止まり、
時間停止解除とともに天変地異が起こるだろう。
逆に、動かした分の速度が蓄積されて
時間停止解除とともに一斉にそのすべてが作用するなら
停止した時間の中で物や人間を移動したあと、
速度がゼロになるようきっちり静止させてから離さないと、
時間停止解除とともにいろんなものが移動してしまう。
たとえばコップを右から左へ移動させたとして、
手を離す瞬間に、わずかにでも動かしながら離してしまうと
時間停止解除とともにその物体は押された勢いで動いてしまう。
これは人間などを動かしたときにも
「何かに押された自覚」を生んでしまうだろうし、
痕跡を残さずにイタズラすることが困難になる。
さらには止まった世界の中で自分だけが生命活動をしているとすると
止めていた時間の合計だけ周囲より余分に歳を取るのは間違いない。
能力を使えば使うほど、「やけに老けていく人」になる副作用を踏む。
逆に、停止した時間の中では一切の物が動かせないとすると、
主人公の衣服は完全に固まり、移動することができなくなる。
極端に言えば空気の粒子も動かなくなり、
太陽光も目には届かなくなる。
まさにすべての物体が静止した死の世界になってしまう。
どういった設定にせよ、時間停止の世界は
何らかの大きな不自由を生み、
アニメやマンガで表現されているような
自分だけ自由に動けてイタズラし放題にはならない。
こういったことを考え続けるのも楽しい。