映画を観ていると、特定の人物を写しながらも
背景だけが近づいてくる(または遠ざかる)ような場面がある。
カメラの中央にとらえた人物の大きさは同じなのに
背景の距離感だけが変化する違和感によって
その人物が感じた不穏な心情を表現しているのだ。
これはドリーズーム(Dolly Zoom)と呼ばれる撮影手法で
カメラのズーム機能と撮影対象の距離を利用している。
カメラで何かを撮影し、撮影対象を中央にとらえる。
そしてカメラをズームすると画面の中心が拡大されるので
最初の状態よりも人物は大きく見えることになる。
さて、カメラと撮影対象が近ければ
写しているものは画面に大きく映る。
カメラが撮影対象から遠ざかれば
遠近感の違いによって人物は小さく見える。
このズーム機能と撮影距離のバランスをうまくとり、
人物をズームで拡大しつつ、カメラを遠ざけていって
撮影している人物の大きさが変わらないように写すのだ。
すると背景だけが圧縮されたような効果が出る。
試しにスマートフォンでも同じことができるか試してみた。
スマートフォンだと徐々にズームするより
ズームしたものを元に戻す方がやりやすいので
あらかじめズームしたカメラを元のサイズに戻しつつ、
撮影対象に近づいていくようにしてみた。
この場合は背景だけが遠のいていくように見える。
本来だとレールを敷いた台車にカメラを乗せて
スムーズに近づいていけるような工夫をするのに対して、
指2本で画面の拡大具合を変えながら
構えたiPhoneを近づけていくのはめちゃくちゃ大変で、
どうしても上記の動画ぐらいが限界だったが、
一応それっぽい映像が撮れた。