先日、今でも忘れられない鈴木みそのマンガを紹介したが、
実はもうひとつ記憶にこびりついている作品がある。
それがちばてつやの「あるインクの話」だ。
ボロアパートの屋根裏に住む男が
奇妙な材料をいろいろと調合して1本のマジックを作る。
男は実験と称して何百枚もの紙を重ね、
一番上に卑猥な絵を描いていく。
なんとそのマジックで書いたものは
下に置かれた紙まですべて貫通するのだ。
苦心の末の大発明に歓喜する男だが、
なんと紙だけでなく机の中にまで貫通していることに気づく。
ペンの貫通は机にとどまらず、
さらに下にまで影響しているという衝撃。
このあたりのドキドキ感がたまらない。
さらに真下の部屋を調べてみると
なんとそこにまで貫通していることが発覚する。
ここからさらに話は大きくなり、
衝撃的なラストを迎える作品なのだ。
子供の頃に親戚の家で読んで以来、ちばてつやと聞くと
「あしたのジョー」でも「あした天気になあれ」でもなく
この作品を思い出してしまう。
ただ、短編作品ということもあって
この作品がどんなタイトルだったか、
何の単行本に収録されていたのかがまったくわからなかった。
それがつい先日、今頃になってちばてつやの短編集が新発売され、
読者レビューに「あるインクの話」の名前が挙げられていたのだ。
「あの作品だ」と確信し、早速買ってみた。また読めて本当に嬉しい。