あちこちで評判を耳にする「Inscryption(インスクリプション)」を
ついにプレイしてみることにした。
カードゲームを題材にした作品ということは知っていたが、
もともとマジック:ザ・ギャザリングや遊戯王、ポケモンカードなど
収集と対戦をウリにしたカードゲームに興味がないため、
どうにも決心がつかずに先延ばししていたのだ。
しかしどの紹介者もネタばれを極端に警戒していて
ごく表面的な説明しかしようとしないところや
その体験の衝撃具合を語っている点が共通しており、
「自分の目で確かめる必要があるな」という思いを
半額セールが後押しして買ってしまった。
奥深いゲーム性と絶妙な難易度
基本的にはカードゲームなのだが、
血や骨といったコストの考え方や
多種多様な特殊効果が理解できるまで
何度も死んで慣れる必要があった。
また、アイコンのデザインが直感的でない上に
それぞれの説明がない場面があったり、
何かを選ぶときの操作性が悪いところなど
不親切な部分が割と多いのも事実。
それでもなんとか耐えられたのは
ルールが奥深くて遊びごたえがあるのももちろんだが、
「もう少しで勝てそう」という絶妙な難易度だ。
勝つためにはカードの種類を覚えて戦略を磨いていくだけでなく、
有利な効果が得られるアイテムを積極的に入手し、
遠慮なく利用することが非常に大切。
特に本作のボスはズルいことばかりしてくるため、
フェアプレイには固執しない方がよい。
また、作中のパズルはヒントやルールがわかりにくいため、
諦めてしまうぐらいなら攻略サイトを見ることを勧める。
斬新な世界観の表現方法
カードゲームとしての面白さ以外に
世界観の見せ方が抜群にうまいところも
本作の魅力のひとつだ。
敵を倒しながら森の中を進みつつも
そういった風景が映像として描写されることはなく、
見えているのは地図とコマだけだ。
いつもは目の部分しか見えていない対戦相手だが、
ボス戦が始まると仮面をつけて
「ボスキャラ」を演じてくれるのも面白い。
あくまで狭い部屋で向かい合う2人が
カードゲームをしているのだという設定を崩さないのだ。
これこそが非常に重要な意味を持っており、
本作の醍醐味がカードゲーム部分ではなく
ストーリーテリングなのだと気付かされていく。
かなりの達成感とともにクリアしたと思ったら
実はそれが全体の3分の1にも満たない地点で、
そこから一気に予想外の展開が始まったのには驚いた。
結局、クリアまで11時間ほどかかったが、
カードゲームの域を超えた不思議な体験が多く、
勇気を出してプレイしてよかった作品だった。