プチメタ3.0

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初代スーパーマリオにはゲーム作りの極意が詰まっている


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マリオが登場するゲームはさまざまなものがあるが、
1985年にファミリーコンピュータ向けに発売された
スーパーマリオブラザーズ」は
40年近く経った今振り返っても、とにかく素晴らしい完成度だ。


ゲーム開発を実際に経験したり、
いろいろなゲームのセオリーを勉強すればするほど、
この初代スーパーマリオのゲームデザインが
めちゃくちゃによくできていることがわかる。


本作の設計がいかに優秀なのかを複数の視点でまとめてみた。

ゲームのルールを自然に理解させる工夫


ゲームを開始したばかりの画面。
これだけでも非常に考え抜かれていることがわかる。


ここでは画面が一定以上スクロールされないと
最初の敵が出現しないようになっている。
つまり、マリオが先へ進まない限り、
プレイヤーは安全が確保された状態で
コントローラーの操作を確認できるのだ。




また、画面中央に対してマリオが左に配置され、
なおかつマリオの顔が右を向いていることから
進行方向は右なのだと感じ取ることができる。




仮に左方向に進もうとしても画面端にぶつかるので
ゴールがどちらにあるのかが自然と理解できる。




しばらく進むと敵であるクリボーが出てくるが、
この敵は飛び越えるか踏みつける必要がある。


地面を歩いたまま進むとぶつかって死んでしまうため、
プレイヤーは試しにいろいろとボタンを押してみて
マリオがジャンプできることを学ぶのだ。




ジャンプすることを覚えたプレイヤーがしばらく進むと
チカチカと点滅するブロック(ハテナブロック)が目に入る。
人間は短時間で変化するものに注目する習性があるので
ここで「あれはなんだろう?」と思わせることができる。




1つ目のハテナブロックにジャンプでぶつかると
「チャリーン!」という小気味よい音が響き、
ハテナブロックを下から突くという行為が正解であることを理解する。




2つ目のブロックからは本作の醍醐味でもあるキノコが出てくるが、
初めてのプレイヤーはキノコが取るべきアイテムかどうかも知らないし、
勝手に移動していくキノコを
右側から回り込んで取るなんて芸当も難しい。


ここで素晴らしいのが土管の絶妙な配置だ。
ブロックから出てきたキノコは右方向に進んだあと、
土管に跳ね返ってマリオのもとまでやってくる。
そしてマリオは初めて巨大化するのだ。


つまりプレイヤーはこの場面で
「キノコは勝手に進んでいってしまうこと」と
「キノコを取ると大きなマリオに変化すること」を学習する。




小さいときにはボコッという音がするだけで
ただ浮かせることしかできなかったレンガブロックも、




大きくなったマリオなら粉々に破壊できるため、
「大きくなる=強くなる」という正しい理解が進む。




また、最初のステージをクリアしたあと、
1ー2では強制的に地下ステージに移動するが、
ここでプレイヤーは土管に入れることを知る。
今まで見てきた土管はただの飾りではなかったのだ。




そのため、2回目のプレイでは
最初のステージである1ー1の土管にも
「もしかして入れるのでは」と考えるようになる。
以前よりも知識が増え、上達した実感が得られる気持ちのいい瞬間だ。


説明書を熟読しなくても自然とゲームのルールを理解し、
どういう行為が推奨されているか学ぶことができる。
これこそ初代スーパーマリオのデザインの素晴らしさだ。

滑らかに難易度が上がっていく工夫

ゲームである以上、ステージが進むにつれて徐々に難しくなっていくわけだが、
単に難易度を上げるのではなく
プレイヤーに自然な上達を促す工夫が重要だ。
この点に関しても初代スーパーマリオは素晴らしい。




ステージ序盤の土管の向こうにいるクリボーは1匹だが、




次の土管の先では2匹続いて登場する。




さらに進むと上から連続で落ちてくる。
敵との距離感や踏みつけるタイミングを何度も味わわせつつ、
自然な流れでプレイヤーを訓練するのだ。




中盤で登場する階段状のブロックでは
たとえスキ間に落ちても特に問題はないが、




その次に登場する同様のブロックでは
真ん中の部分が奈落になっている。
操作する難易度は特に変わらないのだが、
「失敗すると死ぬ」という緊張感がヒヤヒヤさせる。




同じような構成は終盤のステージにもあり、
足場の高さや幅は何も変わっていないのに
より緊張感が大きくなるようになっている。




また、敵と接触したときには一瞬だけ画面を静止し、
ミスしたときの状況がどうだったかをプレイヤーに認識させる。


「確かに敵に当たっている」ということをちゃんと見せることで
自分のミスを自覚させるとともに、
「ジャンプが低かった」「操作が遅かった」など
上達するための反省材料を与えることができる。


理不尽に難易度が上がればプレイヤーは投げ出してしまうし、
なかなか難易度が上がらないと退屈して作業感が出る。
初代スーパーマリオはこの辺のバランスが絶妙なのだ。

少ないデータ量で多彩な表現に見せる工夫

初代スーパーマリオはファミコン用として作られたが、
当時はハード的・コスト的な制限もあり、
とにかくデータ容量を抑える必要があった。


画面上に出せる色は20種類程度に限定されており、
0番は赤色、1番は黄色というように
各番号がどういう色かを「パレット」という情報でまとめていた。
そのため、パレットの中の色情報を変更することで
同じ画像でも色の違う状態にすることができた。
(ドラクエで色違いのモンスターが登場するのも同様の理由だ)




点滅するハテナブロックも実は画像データはそのままに
パレットで定義された色情報を変えているだけなのだ。





ファイアーマリオになったときも
普段のマリオの色を変えているだけだし、1UPキノコも同様だ。




スターを取って激しく点滅するマリオも
実はデザインや画像データは一切変わっておらず、
色情報を短時間で置き換えているだけ。




ステージ1ー2で背景ブロックや敵キャラの色を変えて
地下の暗い雰囲気に見せてしまうというアイデアも見事。




また、背景の雲と草が実は色を変えただけで
同じ画像を使っているのだということに気づいただろうか。
こういった血の滲むような工夫を重ねて
あんなにもバラエティ豊かなステージを表現しているのだ。


初代スーパーマリオの全容量はたったの40キロバイト。
プログラムとグラフィックとサウンドをすべて足して、たったそれだけ。




現在のデータで例えるとこの大きさの写真ぐらい。
このわずかなサイズの中に全64ステージ+αが詰まっていたのだ。

直感的で気持ちのいい触り心地の工夫


マリオのジャンプはボタンを押している長さによって高さが変わる。


本来、ジャンプの勢いは地面を蹴った瞬間の強さで決まるので
飛び上がったあとに何をしても最高到達点に変化はないのだが、
マリオではおそらくボタンを押している間だけ重力の影響を小さくして
減速する度合いを少なくしていると思われる。


ボタンを押していると空中でもうひと伸びする感覚が気持ちよく、
ついついボタンを強く押してしまうところに
マリオの操作感の良さが表れている。




マリオは左右の動きにも慣性がついていて
同じ方向に移動し続けていると加速するが、
それに伴って歩くアニメーションも早く変化するところがうまい。


Bダッシュをしたときにシャカシャカと手足が回る必死な雰囲気や
方向転換したときに急ブレーキがかかる感じなど、
とにかく触り心地が素晴らしいのだ。




クリボーを踏みつけたときもただ消すのではなく、
ちゃんと縦につぶれた画像に差し替えることで
踏み潰した感覚が味わえるようになっている。




各ステージの最後には階段状のブロックがあり、
ギリギリから助走して跳ぶことで旗の高い位置に飛びつけるが、
マリオは得点を競うタイプのゲームではないため、
この行為には特に意味がない。


それなのに大半の人が大ジャンプに挑戦してしまうのは
「高いところに飛びつくことができると気持ちいい」という
ただそれだけの快感が提供できているからなのだ。

すべてのゲーム開発者がプレイすべき教科書

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今の環境なら任天堂公式のサービス「Nintendo Switch Online」を契約し、
その中の「ファミリーコンピュータ」を無料ダウンロードするのが
初代スーパーマリオを一番楽にプレイできる方法だろう。


ファミコンの初期に発売されたゲームということもあり、
プレステ全盛期に生まれた最近の若者には
初代マリオをほとんど知らなかったりする人もいるだろうが、
今プレイしても本当に見習うべき要素ばかりなので
ゲーム開発に関わる者ならすべからくプレイして欲しい。



mclover.hateblo.jp

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