ずっと前に聞いた中学生の話が忘れられない。
その少年には知的障害を持つ兄がいて、
ふとした拍子に騒ぎ出すのを必死でなだめたり
行方がわからなくなったら探しに行ったりと
問題が起きないように毎日ずっと世話をしているのだ。
そんな苦労を続ける少年を周囲の人は気の毒に思うが、
当の本人はそんな兄に感謝をしているのだと言う。
というのも、彼の両親は子供は1人だけでいいと考えていたのだ。
しかし生まれてきた子供が障害を持っていたため、
彼を世話する存在が必要だと2人目を作ることにしたという。
つまり、兄が障害を持っていたからこそ
弟である自分が生まれてこれたわけで、
彼は兄に対して感謝をしているし、
それが自分の存在意義なのだと考えているのだ。
手間のかかる兄のことを稀に疎ましく思いそうになる自分に
強い罪悪感を持ちつつ、また今日も健気に世話を続ける。
とある映画に出てきたエピソードだが、
その辛すぎる境遇に胸がギュッと締め付けられる。