「おすわり!ふせ!お手!おかわり!ジャンプ!」
テレビで、飼い主の言うとおりに芸をする犬を見た。
何でも言うことを聞く犬に飼い主は満足そうである。
でもダメだ。
ただ言うことを聞くだけの犬なんて面白くも何ともない。
私ならもっと違う風に芸を仕込む。
まず、犬を6匹用意し、それぞれに
「ポチ」「オスワリ」「フセ」
「オテ」「オカワリ」「ジャンプ」という名前をつける。
そして、ポチには「おすわり」と言うとおすわり、
「ふせ」と言うとふせ、「お手」というとお手、
「おかわり」と言うとおかわり、
「ジャンプ」と言うとジャンプの芸をするように仕込む。
つまり、ごく普通の芸のよくできる犬にするのだ。
次に、オスワリという犬に
「ふせ」と言うとおすわりをするように仕込む。
つまり、オスワリにとっては「『ふせ』=おすわりの芸」なのだ。
同じように、「お手」と言うとふせ、
「おかわり」と言うとお手の芸をするというように
ポチと命令をひとつずつズラして教える。
さらにフセという犬には、「お手」でおすわり、
「おかわり」でふせの芸をする、というように、
オスワリからさらに命令をひとつずつズラして教える。
以下、6匹すべての犬に命令をひとつずつズラして教える。
まとめると下図のようになる。
犬の名前 | ポチ | オスワリ | フセ | オテ | オカワリ | ジャンプ |
「おすわり」で 実行する芸 |
おすわり | |||||
「ふせ」で 実行する芸 |
ふせ | おすわり | ||||
「お手」で 実行する芸 |
お手 | ふせ | おすわり | |||
「おかわり」で 実行する芸 |
おかわり | お手 | ふせ | おすわり | ||
「ジャンプ」で 実行する芸 |
ジャンプ | おかわり | お手 | ふせ | おすわり |
この訓練のあと、6匹の犬を離れたところに待機させる。
そして「ポチ!」と叫ぶと
まずポチという犬が走ってくる。
そして「おすわり!」と叫ぶと、
ポチがおすわりをしながら
オスワリという犬が走ってくる。
さらに「ふせ!」と叫ぶと、
ポチがふせをしながら
オスワリがおすわりをして
さらにフセという犬が走ってくる。
「お手!」と叫ぶと、
ポチがお手をしながら
オスワリがふせをして
フセがおすわりをして
さらにオテという犬が走ってくる。
要するに「おすわり!ふせ!お手!おかわり!ジャンプ!」と叫べば、
それぞれの犬がひとつずつズレながら
見事な芸を披露してくれるのだ。
統率された動きに人々は感動するだろう。
これで私も名ドッグトレーナーだ。CMひっぱりだこ。